Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

そうして、それと同時に、一昨夜、古泉堂を訪ねて、紺野老人と対談した時の光景が、まざまざと眼の前に浮んだ。

康雄が『好色破邪顕正』の値をたずねて、「少し高いな」と言ったとき、紺野老人は、かけて居た眼鏡をはずした。それは老人が気に喰わぬときに行う動作の一つであるが、その時、一方の玉がぱたりと畳の上に落ちた。老人は舌打ちしながら再び金色の枠にはめたが、この事によって、眼鏡の玉が落ち易くなって居たことはたしかである。だから若し、老人が大平氏宅の庭を歩いたとすれば、眼鏡の玉の落ちることは、ちっとも不思議なことでない。

けれど、古泉堂主人は一たい何の用あって大平家を訪ねたのであろうか。こう考えると康雄は、はたと行き詰らざるを得なかった。たとい紺野老人のレンズを発見したとて、必ずしも、紺野老人が大平家を訪ねたとは断言し得ない。これはもっとよく、事情を明かにした上で推理を行わねばならない。……………………

「一たい、それでは、この眼鏡の主は誰で御座いますか」

突然、お豊が質問したので、康雄ははッと我に返った。彼は附添婦のお豊からレンズを渡されて後あまりに意外な発見に、お豊が眼の前に居ることも打ち忘れて、空想に耽って居たのである。