Classiques japonais avec furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans
それから書斎のドアを開いた。入口の、扉のあたる柱の内側に電灯のスイッチがあった。然し自分はあかりをつけないで絨毯の床を手さぐりで中央に進み、そこに置かれてある机の上の台附電灯のスイッチを捻って絶縁させた。これで電灯をつけるためには二重の手数を要する訳である。それから電灯を取りはずして勝手元に引きかえし、検べて見るとそれは、いつものとおりの艶消し瓦斯入りの、一〇〇ボルト六〇ワットの電球であった。直ちにポケットから鑢を取り出して先端をこすると、間もなくビュンという音がした。
直径四ミリメートル位の、即製の孔に眼をあてて、自分は電球の内部をのぞいて見た。そこには、曇り硝子張りのドームを持つ建物のように、美しい柔かな感じの世界がぼかし出されて居た。あらい蝙蝠傘の骨を張り拡げたような吊子に、ピアノの鋼線に似た繊条が、細い銀蛇のくねりのように、厳めしい硝子棒と二本の銅柱に押しあげられて居る。小さいけれども、詩の国のようなこの荘厳を蹂躪するのは、人を殺害するよりも遥かに惜しい気がした。
はッと私は空想の世界を去って、鑢をポケットに押し入れるなり、紙の漏斗を製って、火薬を電球の中へ注入しはじめた。