Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Lisez 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 511 765 caractères · 1011 écrans

Aozora Bunko

おのれの首を投げる人

とにかく、春もくれかかる東海道の辻には、そのうわさが、なにかしら、人に無情を思わせた。

おのれの首を投げる人

一

すんだ笛の音が流れてくる。

鬼一管とか天彦とかいう名笛の音のようだ。なんともいえない諧調と余韻がある。ことに、笛の音は、霧のない月明の夜ほど音がとおるものだ。ちょうど今夜もそんな晩――。

そこは、白樺の林であった。

さらぬだに白い斑のある樺の木に、一本一本、あおじろい月光が横から射している。

笛がとぎれた時の、シーンとした静寂と冷気とは、まるで深海の底のようだ。けれど、事実はおそろしい高地なのだ。

小太郎山の中腹、陣馬ヶ原の高原つづき。

かの、伊那丸の留守をあずかる帷幕の人々、民部や蔦之助や小文治などが、天嶮を擁してたてこもるとりでの山。

笛は喨々とうむことなく、樺の林をさまよっている。やがて、そこに人かげがうごいた。見ればひとりの美少女である。長くたれた黒髪に、蘭の花をさしていた。

その人かげのあとから、幾年も朽つんだ落葉をふんで、ガサ、ガサと、歩いてくる者があった。小具足をまとった武士である。

七、八本の槍が、月光をくだいてギラギラとした。