Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
典膳は、血が熱くなった。自ら自分に問うて、
(いまの腕で、彼に勝てるか、まだ勝てないか)
を胸に質した。
(勝てる)
当然なように肚の底からわき上がった信念が、彼の面に微笑を刻んだ。
早めに、湯漬をかきこみ、木賃を出た。外の道はまだ夕明りの頃おい。
訪ねあてた農家の柴垣には、夕顔が白く咲いていた。さし覗くと、幸いにも、その人はいま外の風呂小屋から出て来て、母屋の土間へはいりかけていた。
「弥五郎先生っ」
大きく呼びかけながら近づくと、一刀斎は濡れ手拭をさげたまま、まじまじと典膳のすがたをながめて、
「……誰だな」
と、ずいぶん間を措いてからたずねた。
「御記憶はないでしょう。しかし私には充分な覚えがあります。数年前、上総の夷隅の浜へお上りになったことがありましょう」
「ほ。……ある」
「数日を、龍王寺に御滞在。それから再びお旅立ちの朝、万喜頼春の家中のものが、道を阻めて、敢て先生のお刀をわずらわしました」
「ははあ。あの地摺り青眼か。……ふッむ。さては、おぬしには、その身寄りの者とでもいうのか」
「ちがいます。縁類のよしみによって一太刀うらみ申さんなどという仇討ちの者ではありません。