Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
築地の外の桜並木が、枝もたわむばかり咲き誇ってきた。夜も昼も、そこからチラチラ白いものが母子の室へ散り迷って来た。
嬰児は、眸をうごかしぬく。もうお目が見えるそうなと、老母は、その生命の育ちをむしろ儚げに呟いた。静は、花の散るのを見ると、吉野の雪の日が思い出されてならなかった。――別れた人のうしろ姿に、霏々と雪ふぶきの吹いていたその日の別離を。――幾たびも振向いては去った彼の君の眸を。遂には、雪の中へ泣き倒れて、雪に埋もれていた自分の姿を。
十
四月の一日であった。
もう桜も若葉だった。散り消えた花の影が、何か遠い過去であったような心地のする朝。
「折入って、静どのに」
と、いつになく丁寧に、安達清経がはなしに来た。
「ほかでもないが、この四日、頼朝公には夫人の政子の方と御一緒に、鶴ヶ岡に御参詣がある――」
そう前提きして、清経は、頼朝の命として、次のような事を伝えた。かねて頼朝にも、弟の内縁の静が、神泉殿の雨乞いの舞楽に、九十九人の舞姫のうちでも優れた白拍子であったということは聞き及んでいるところから、
(四日はちょうど参詣のついで、ぜひ社殿の廊においてなと、隠れなき上手の舞をよそながら見たい)