Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
のみならず、わずかな衣食の糧と恃む所領も、大和大納言秀長がこの地に来てから没収されて、まったく無領の一郷士にまで成下がってしまったのである。――幸いにも、祖先以来の砦の山は、邸内といえるので、藪を伐り林を拓いて、家族召使もみな鋤鍬を持ち、自分で耕して自分で喰う――自給自足を辛くも生活として今をしのいでいる有様であった。
「思えば気の毒な――」
と、宗厳は、わが身を憐れむより、まず家族が愍れまれた。家族を愍れむよりは、多くの家士を不愍に思った。
三度も領地を失っているので、その間に、自ら家臣も減り、また他へ仕官を求めて去った家士もあるが、今もなお、
「御主君が鍬を持つなら鍬を持って。御主君が肥桶をかつぐなら自分らも肥桶をかつぎ。――たとえ、稗を喰っても!」
と、踏み止まっている家中も多いのである。そうした不平も鳴らさない家士たちを見ると、宗厳は眼を熱くして、
「――何の徳もない自分に」
と、主人たる自分の不才が、独り責められもして、
「済まない」
と、心のうちで掌をあわせた。
慶長元年。
ことし柳生石舟斎宗厳は、六十八歳。
わが鬢髪の霜に気づいて、彼が見まわした彼の境遇はそんな中にあったのである。