Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

「おい君、君が煙草屋のよし子を殺したのだろう。白状したまえ」と言いました。

この言葉をきくなり、今まで眠って居たらしい男の心が猛烈に活動しかけたと見え、大声を出して、「よし子をかえせ。よし子は殺されたか」と叫びました。あまりにその声が大きかったので、鯉坂君はびっくりしました。

が、驚きは単にそればかりではありませんでした。暗室の中で、急に犬が啼き出し、どたんばたんという音がしたかと思うと、次の瞬間、今迄神妙に実験の材料になって居た犬が、固定してあった革紐を引きちぎって、暗室の中から飛び出し、あっという間に男の方へ尾を振って駈け寄って行きました。すると、これを見た男は、その場にどさりと坐りこみました。

「ああ、よし子か。よく生きて居てくれた」

男は腹の底から搾り出すような声でそう叫びながら、呆気にとられて立って居る検事と鯉坂君との前で、暫らくの間、犬をしっかりと抱きしめました。

鯉坂嗣三君の新案探偵法は、かくのごとく、まんまと失敗に帰しました。その男は言う迄もなく、鯉坂君が盗んで来た雌犬の所有者でありました。男はその犬をわが子のように愛し、よし子という名をさえつけて呼んで居ましたが、先日突然犬が居なくなったので、悲しさのあまり一時的に、発狂して街中をさがしまわったのです。