Classiques japonais avec furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans
…………と、朝井刑事は語り終って、ホッと一息した。
「女の身許はまだわからぬのだね?」と霧原警部はたずねた。
「はあ」
「現場で、『人殺しーい』といったのは無論女の声だったろうね?」
「附近の人々はみんな、女らしい黄ろい声だったと申しました」
「けれど、その人々が駈け寄ったときには、女は何ともいわなかったのだね?」
「はあ、苦しそうに唸って、地面に文字を書いたそうです」
「短刀は?」
「鑑識課で検査してもらいましたが、指紋は一つも発見されぬそうです。加害者は多分手袋をはめて居ただろうと思われます」
霧原警部は懐中時計を出して見た。
「まだ、大学の解剖までには間があるね。僕も一応死体を見に出かけるつもりだが、その前に、嫌疑者として送られた男を一寸訊問して置こう。袖の血痕は鑑識課へまわしてあるだろうね?」
「はあ、一部分切り取って今検査してもらってあります」
やがて霧原警部の前に連れられて来た男は、黒い長い髪を分けた色白の美男で、昨夜眠らなかったためか、眼の縁が黒ずんで居た。見ると、左の袖には血のとばっちりが点々ついて居た。
「君は何という名だね?」と警部はやさしく訊ねた。