Classiques japonais avec furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lisez 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 989 caractères · 144 écrans
けれども、二つのWのうち、己は Wine の味を知ったゞけで、まだ Woman の味を知らない。此の点になると、己よりも外の店員の方が内々で遠征を試みて居るらしい。時々、番頭だの手代だのが、眠そうな顔つきをして、昨夜は持てたの振られたのと、こそ/\話をやって居るのを聞く事がある。彼等は毎週に一度ぐらい、主人が寝てしまってから何処かへ出掛けて、朝早く帰って来るのである。己も満更好奇心が起らぬ事はないのだが、何だか恐ろしいような気がするし、格別其の方面には激しい慾望も起らないので、とうとう今日まで童貞を守って居る。異性に対するイリュウジョンが破れると困るから、まあもう少し辛抱して見よう。
今のところでは、やっぱり浅草の公園へ行って、あの辺をうろつき歩くのが一番面白い。活動写真だの、連鎖劇だの、玉乗りだの、手品つかいの見せ物などを覗いて廻ると、己は一日居ても飽きない。時々歌舞伎座や市村座あたりの、高級な芝居を立見するけれど、浅草の見せ物に比べると役者がいやに上品ぶって、味もそっけもないマンネリズムを繰り返して、不愉快なこと夥しい。此れに反して、公園の見せ物は、やゝともすると殺伐に流れ、野蛮を発揮するが、其処に何とも云われない空想の世界が暗示されて居る。