Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
「むッ」
と叫んだのは、刀下の人ではなくて、どこをどうすくわれたのか、どんと、お延の側まで投げつけられた小六の呻きだった。
「不埒な奴だ」
と飛び起きるが早いかその胸元を取ッちめた侍は、黒漆長髯の偉丈夫、音声容貌、かの鐘巻自斎にまぎれもない。
音無瀬河原から、忽然と姿を消し、福知山の城下へ入ろうとして果さず、由良の伝吉を激流の瀬へ投げこんだまま、いずこともなく立ち去った鐘巻自斎を、平凡な田舎武士と見て、枕さがしの毒手を伸ばしたのは、まったく、奸夫奸婦の運のつき、眠り獅子の髯へ、浅慮にも手をやったに等しかったのである。
「シッーしばらく。しばらくお手をッ……」
と組み伏せられた小六は、ばたばた畳を足掻きながら呻いた。
「意気地もない分際で、人の閨を窺うとは、底の知れぬ呆痴者めが、必定、その女を手先にして渡り歩く道中稼ぎであろう。諸人のため、代官所へ引き渡すから左様心得ろ」
「しばらく、ご立腹はさることながら、決して左様な者ではござらぬ……お延、お詫び申せ、お詫び申せ」
「お武家様、まことに私の心得ちがい、どうぞ、おゆるし下さいまし……この通りでござります」
毒婦の機転は、巧みに小六の調子をうけて、ほとんど、涙にむせぶような哀音で、口から出まかせに自斎の前へ、縷々の詫び言をくり返した。