Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate

Aozora Bunko

四

寛永初年、将軍家の開基以来、江都随一の花見場所となったこの山は、小唄浄瑠璃仕舞などもお構いなし、山内、花時に限って、無礼講、武家も町人も女も男も、毛氈花むしろの上には階級なく、清水堂のほとり、寒松院の並木、吉祥閣の下、慈眼堂の前、いたる所、花ある所、さんざめく小袖幕のかからぬ所はない有様。

「旦那、旦那、何しろこの雑沓で、えらく混み合いますから、もし、ご無礼があっちゃいけません。お寝みになるなら、すみませんが奥へ入っておくんなさい、もし、旦那……」

屏風坂の下り口、慈眼大師の石垣へ、葭簀を掛けた一軒の茶店で袖無しを着た茶店の親爺が、山では珍らしくない、酔どれ武士の鼾を揺り起している。

「旦那、私の方の都合ばかりでなく、この店先じゃ、騒々しいことも堪りません、どうぞ、ちょっとお眼をお醒ましなすって……」

「うるさい」

亭主の手を突っぱねて、寝返り打った途端に、がたりと、縁台が倒れかかったが、酔どれの侍は、それに抱きついて、前後不覚、下界の花をよそに、魂を夢睡の国に遊ばせている。

「困ったなあ、二本差だけに、うっかり起すこともできない」

亭主は、しかたなく、その寝相を眺め入ってしまった。