Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

Leggi 浅草風土記 (あさくさふどき) di 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.294 caratteri · 318 schermate

Aozora Bunko

「どうかいたしましたか、あの男?」

「御存じありませんか?」

「存じません」

「吉原におりませんよ、もう、あの男」

「で?」

「満洲へ行きました」

「満洲?」

「いろいろ曰くもあったんでしょうけれど。――とにかく土地にいられなくなったことだけはたしかです」

「可哀想に」

「満洲へ行くまえ、しばらく大阪あたりにいた塩梅です。――その時分、どこからともなくよこした句があります。――後厄のとうとう草鞋はいちまい……」

「後厄のとうとう草鞋はいちまい……」

「幇間もらくは出来なくなりました」

……震災が来ても、区画整理が出来上っても、「八百善」がなくなっても、「道哲」が空地になっても、「日本堤」が平坦になっても、かれらの精神生活は、焼けず、潰えない。かれらの感傷はつねにかれらをつつみ、かれらの人生はつねにかれらをめぐって身動がない。――ということは、たとえば、水の底にしずんだ落葉……一トたび水の底にしずんだ落葉はつねにしずかに冷やかだから……

おもわず話が横へ外れた。――が、話は横へそれてもわたしの足はそれなかった。土管、瓶類、煉瓦、石炭、タイル、砂利、砂、セメント、そうした文字のいたるところ、壁だの看板だのに書きちらされた右手の家つづきをながめながら、わたしは真っ直にあるいた。