Classici giapponesi con furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Leggi 浅草風土記 (あさくさふどき) di 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.294 caratteri · 318 schermate
さのさぶし
という“さのさぶし”の文句がある。
わたくしの十四五の時分に行われたこの流行歌は、その前後に“しののめぶし”があり“らッぱぶし”があったけれど、おもい切なるものを描きえた点に於て、外のどれよりもすぐれていた。すくなくもわたくしのその十四五の時分の“夢”と“哀しみ”とは、その歌の、たとえば捨小舟の波に弄ばれるようなふしまわしのなかに溶けこんだといっていい。
そのころ小伝遊という若い落語家がいた。色の白い、華奢なからだつきの、わるくしなしなした感じの男だったが、この“さのさぶし”が好きで、噺のあとに於て、一つでも二つでもきッとこれをうたった。しかもそのうたいだすや、扇子で高座を叩き、からだを蒟蒻のようにくねらせ、目をつぶり、口を曲げ、金歯を剥きだし……おどろくべき表情が高座に溢れた。
“何というキザな奴だろう”
と、大ていのお客は眉をひそめたが、不思議にわたくしには反感がもてなかった。むしろそのおどろくべき表情のうちに“さのさぶし”のもつ無知のはかなさをさえわたしは感じた。前記“泉水に……”という文句は、この男の三度に一度はかならずうたった文句である。