Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
そうだ、その頃には、まだ新九郎の母なる人がこの世にいた。クリクリとして、美しいお稚子人形のようであった新九郎は、その母に連れられて、城下端れへ宮詣りに行ったことがある。
何のお宮であったか、今は新九郎も憶い出すことができない。けれど、その帰り途に、子供心に怖ろしいと思った老人の前に立って、ギラギラする天眼鏡で、さんざん顔を見られたことを覚えている。後に思えば、それは、つまらぬ売卜者であったらしい。彼の母は、そういうことに、特別な信念を持つ人であった。
それからというもの、母は新九郎を人なきところへ呼んでは、訓誡の語調で、沁々とこう云い聞かせるのだった。
「新九郎や、お前の相というものは、怖ろしい剣難の相と、剣難より怖い、女難の相というものを持っているのですとさ。お分りかえ、決してお忘れでないよ。人と喧嘩をするではありません。気を優しくしなければいけません。剣とはつるぎという文字、剣のさきにかかって、非業な死を遂げることがないようにお母様も方々の神様に祈りました。だから、お前もよく身をつつしまねばなりませんよ」
涙さえ含んで、幾度となく繰り返す母の真情。