Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
三
「そうだ! 拙者の行く途はそれだ!」
新九郎は心で叫んだ。翻然と大悟した彼は、無明の闇から光明の中へ、浮かみ出したような気持がした。
思い立っては矢も楯も堪らなかった。情死の片残りという不甲斐ない身を、一日も晏如としている恥かしさに耐えなくなった。
その夜新九郎は、ひそかに三通の書面を認めた。一通は伝吉へ、一通は千浪の父作左衛門へ、最後のは不遇な兄重蔵へ宛てたものであった。
そして、旅仕度も着のみ着のまま、彼の姿は、暁方近くに、伝吉の家の裏木戸を出て、行方知れずになった。
三
「親分へ、飛んでもないことが出来ましたよ」
と夜が明けてから、新九郎の部屋を覗いた女房のお藤が、顔色を変えて伝吉へ告げに来た。
「朝ッぱらから、何を慌てていやがるんだ」
「だって親分、新九郎さんが見えませんよ」
「何?」
と伝吉もさッと蒼くなった。
「裏木戸が開けッ放しで、この手紙が残してあるだけですよ」
とお藤からそれを手渡された伝吉は、腰が抜けたようにどッかと大胡坐をかいて、封を切る手さえふるえていた。
てっきり、千浪の死を慕って行った。――彼の直覚はそう閃めいたのであった。ところが一字一字、読んでゆくうちに、見事その直覚は裏切られて、はらはらと感激の涙さえこぼしてしまった。