Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

Leggi 浅草風土記 (あさくさふどき) di 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 162.294 caratteri · 318 schermate

Aozora Bunko

水の匂

*

松の内の雪は夕方からふりだしてなつかしい。そしてその夜一ト夜ふりあかしたあくる朝の、ふかぶかとなお曇りつづけた空の下に、重い雪の嵩をのせてうなだれた門々の笹、しめ……

そして、そのふり積んだ雪のこころは、まゆ玉の、垂れたその懶い枝々にしずかにかようのである。

(昭和七年)

水の匂

……なつかしき水の匂よ。

……わたくしは、子供の時分、浅草馬道の小学校へかよった。

その小学校は隅田川の河岸に近かった。

だから、わたくしは、毎日、隅田川の水の匂にそまった空を、教室のまどから眺め眺めした。

……その空……隅田川の水の匂にそまった空。

……五月、三社さまのおまつりのうわさがきこえはじめて、その水の匂は日に日に濃くなった。そして十六日の宵宮、はやくも明日を待ち兼ねてのうき立つはやしの音をのせ、軒々の注連を、提燈を、その提燈の上にかざした牡丹の造花をふいてわたる夕かぜの、いかに生き生きと、あかるく、すがすがしかったことよ。……途端に、その界隈、くッきりと、影あざやかに「夏」の極印がうたれたのである。

その界隈……

その小学校は、隅田川の河岸に近かったばかりでなく、浅草寺の境内とも、ものの半丁とはなれていなかった。