Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
しかもこうして顔を突きあわせて、親しく物を言いかけるのは実に四年目であった。怨めしいと懐かしいとが一つにもつれ合って、かれは容易にことばも出なかったのである。
むかしの我が名を呼びかけられても、玉藻は返事もしなかった。千枝松はまたひと足進み寄って言った。
「玉藻の前と今ではお言やるそうな。幼な馴染みの千枝松をよもや忘れはせられまいが……」
「久しゅう逢いませぬ」と、玉藻もよんどころなしに答えた。
「お身の出世は蔭ながら聞いている。果報めでたいことじゃ」
めでたいという詞の裏には一種の怨みを含んでいるらしいのを、相手は覚らないように軽くほほえんだ。
「ほほ、羨まるるほどの果報でもござらぬ。お前がむかしの意見も思い当たった。上つかたの御奉公もなかなか辛い苦しいもの、察してくだされ。して、こなたはやはり叔父御と一つに暮らしていやるのか」
「いや、わしは烏帽子折りの職人をやめて、日本じゅうに隠れのないお人のお弟子になった」と、千枝松は誇るように答えた。
「そのお師匠さまはなんというお人じゃ」
「陰陽師の播磨守泰親どのじゃ」
「おお、安倍泰親どのか」
玉藻の顔色はさっと変わったが、忽ちもとにました柔らかい笑顔にかえった。