Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate

Aozora Bunko

二

信西は黙っていた。定めてなんとか相槌を打つことと思いのほか、相手は固く口を結んでいるので、忠通はすこし張り合い抜けの気味であった。彼は信西の返事を催促するように、また言った。

「あれほどの乙女を草の家に朽ちさするはいとおしい。眉目形といい、心ばえといい、世にたぐいなく見ゆるものを……。のう、入道。あれをわが屋形に迎い取って教え育て、ゆくゆくは宮仕えをもさしょうと思うが、どうであろうな」

信西は眼をとじて黙っていた。彼の険しい眉は急に縮んだかと思われるように迫ってひそんで、ひろい額には一本の深い皺を織り込ませていた。彼が大事に臨んで思案に能わぬ時に、いつもこうした物凄い人相を現わすことを忠通もよく知っていた。知っているだけに、なんだか不思議にも不安にも思われた。

「入道。どうかおしやれたか」

重ねて呼びかけられて、信西は初めて眼をひらいたが、何者をか畏るるようにその眼を再び皺めて、しばらくは空をにらんでいた。そうして、呻くようにただひと言いった。

「不思議じゃのう」

それは藻が屋形の四足門を送り出された頃であった。

二

千枝松は自分の家へいったん帰って、日のかたむく頃にまた出直して来た。