Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
「これ、やかましいお話は後ほどになさらぬか。そして、早く御方様を連れて、お召の衣、お風呂の支度など、急がねばお体に触りますぞえ」
「はい」
老女にたしなめられた腰もとたちは、やッと落ち着いて、屋形の中へ声をかけた。屋形船といっても、これは、一見して、普通の町人用のものとは違った造り、金鋲御簾づけの絢爛な三挺櫓であるが、暴風雨は公平に、この高貴なご料をも、さんざんに揉み悩ましたものと見えて、紫のまん幕、金襴ぶちの御簾までが、無惨に吹きちぎられていた。
「御方様。お迎えの者が出ております」
寮の用人とも見える侍が、舷にひざまずいてこう云うと、破れた御簾のうちから、妙なる答えが低く洩れて、御方の姿が、半ば月の光に照らし出された。
「おお、よい空になりましたこと……」
呟やいたまま、うっとりとして、三叉の銀波、佃の芦の洲などに眼を取られて、すぐ桟橋へ上がろうともしなさらない。
月のせいばかりとも思われぬその顔は、白琅を浮き彫にしたような、好ましい白さと、くッきりした線を描いている。芳紀のほども、美しさに過ぎて、幾つぐらいとも計りがたいが、蘭瞼細腰の羅すがたは、むしろ天女に近いと云ってもいい。