Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate

Aozora Bunko

乞うようなことはできなかった。

それのみならまだしも、玄関式台の拭き掃除、訪客の取次、荷担で水汲む類の業まで、仲間たちと一緒にやるのが門僕の掟であった。

「アー冷たい……」

氷柱のような縄釣瓶で、井戸から荷担へ水を汲み込んでいた新九郎は、馴れぬ業にヒビあかぎれとなった両手を口へ当てハーと息を吹きかけていた。

ポン、ポン、ポン。あちらで手を叩く音がする。新九郎はハッとして、

「おお師範代がお眼ざめになったらしい。ただの召使根性のようなこのざまを見られては恥辱」

胸にこたえて荷担の天秤へ肩を当てた。

短い革袴に稽古着一枚、これがその昔、孔雀のような振袖姿を、春風に吹かせて歩いた新九郎かと思えば涙ぐましくもなる。

危うげな足どりで、やっと勝手の水瓶の前まで担いで行くと頭の上から、師範代の梶新左衛門が、

「横着者めが、なぜ水をきらしておくのじゃ、とッとと顔を洗う水を汲んで来い」

寝起きの不機嫌に任せて呶鳴りつけた。

「いつにないお早いお眼醒め、まことに不覚を致しました。唯今すぐ……」

脚高の盥へなみなみと水を張って、新左衛門の前へ捧げて行くと、

「えいッ」

不意に気合をかけられた新九郎は、あッとおどろいて飛び退いたが、もう、頭から盥の水をザーッと全身に浴びせられていた。