Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
「エーイッ」
二度目の気合をうけると、彼はまだ一太刀の刃交ぜもせぬうちに、タラタラと鬢や額の根から冷たい膏の汗。面は蒼白。
あわれや、眼も血走ってくる。
「無念!」
焦心れど打ち込む隙がない。唇にも一点の血がにじむ、その頃には面色すべて生色を失なって、ここに生きながら精根尽きて、枯木のように立ち竦んでしまったかと見えた刹那。
「お!」
自斎の眼にとまった一点の露。それは必死無念の新九郎の瞼にかすかに泛かんできた涙だった。あるいはそれ、血か肉かも知れない。
武士が剣をとって敵と会いながら、まつ毛に泛かす涙! 自斎が思わず、
「おお」
と叫んだのも道理、これほど悲壮なる涙はない。
「かくまでに無念と思いつめている大願の試合をむざと打ち込んでしまうのは余りに不愍である。自分から一本の勝ちさえとれば、彼の本望が達するのだ。ここでわざと負けてやるのも武士の情けではあるまいか……」
と自斎は密かに思ったが、またすぐに、
「いや、そうでない!」
と考え直し、
「研けば光る名玉に、情けの曇をかけるのは武士の情けに似て非なるものだ。この天才を完き人物にするものは即ち敵だ。真の情けは最後まで新九郎の敵になってやる所にある」