Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
「いいえ、今の話に引き較べて、吾身の兄弟を憶い出していたのでござんしょう。――けれど、妾もあの通り、可憐い妹を振り捨て、受けられる栄華をも捨て切って、身も命も貴方に投げ出しているのではございませぬか。ねえ新九郎様、もう誰にも心を惹かれずに妾とたッた二人だけの世の中になって、この儘どこかの隠れ家に永く暮らすと覚悟を決めてくださいませ」
「アアくどい……いつも同じことをそう何度も繰り返さなくとも分っているに――何といたところで、もうどうなる新九郎でもありゃしねえ」
「定めし、憎い女とお思いなさりましょうね……」
「憎い? ふふん……憎い奴は新九郎の腐った性根だ、えい、また酒で殺してやろうか」
手を伸ばして、膳の上にあった残り酒を引寄せると、御方は慌ててそれをさえぎりながら、
「まあ、幾ら何でも、そうはお毒でござりましょうぞ」
「毒であろうが何であろうが、頭の痛みもこれさえ飲れば癒るのだから、野暮な止め立てをしてくれるな」
引ったくるように徳利を取った新九郎は、グウ……と一息に飲りかけたが、その時俄かに、物に襲われたような顔をして、ジッと聞き耳欹ててしまった。
墓場のような静けさ――新九郎の瞳がその刻一刻に異様な怖れを帯びて、額から冷たい汗がタラタラと流れ落ちて来さえした。