Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
暫くの間、ひそかだった納屋の中で、やがて男女の低い囁き――
「お蝶。それに偽りはあるまいな」
日本左衛門の低いうちにも力のある言葉です。
「考えてみると私ほど、世の中に頼りの薄いものはありませんもの……。いつかの晩、鼻寺の暗やみで、女房になれと、あなたに言われた時は、ただ怖い一心でしたが、後になってみると、ほんとに自分の生涯を託すお方は、あなたよりほかにない事が分りました」
「そうだろう、お前は切支丹屋敷を脱出した、ころびばてれんの娘だ。お前を容れる世間はなく、お前を狙け廻す宗門役人があるばかりだ」
「ほんとに私はその通りなの。今日は駕で来ましたけれど、外へ出るには、油断も隙もならないので、男姿で役人の目を晦ましているくらいなんです。……可哀そうな女だと思って下さい」
「おれも孤独だ。孤独のおれはそういう薄命な女をいつも心でさがしているらしい」
「じゃ今でも、鼻寺で言ったことばに変りはないのでございますね」
「あのお粂に裏切られた後は、一層、愛というものに飢えて、孤独なおれは、しきりと恋の相手を探していたが、おれは常に運命の尺前に、十手と獄門台を見ている大盗だ。