Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
緑林涼風。
日本左衛門のこす。
忘れはしませぬ! 去年市ヶ谷御門外の上屋敷へ忍びこんだかれが、洞白の仮面箱を持ち去って、そのあとの床の間に、こう墨黒々と書き残して行った不敵な文字を。
「ウーム! 其方は日本左衛門」
ジリジリと瓦の桟に足の指をかけて詰め寄ると、かれは、四囲の叫喚も耳になく、八方の御用提灯も目にないものの如く、
「おお、おれはその節飛んだ騒ぎをさせた男、いかにも日本左衛門だ」
「おのれ、よくも秘蔵の仮面箱を盗みおったな」
「あとで聞いた噂には、そのためにお手前は、父中将殿の怒りにふれて上屋敷を追われ、今では、根岸に閉門幽居の身の上だってな。おれも、蔭で聞いて少しは気の毒に思っている」
「えい、左様なことはどうでもいい! ここで汝の姿を見つけたのは何より幸い、秘蔵の品を盗んだ下手人、家来金吾の仇、この万太郎が召捕ってくれるから、そこ動くな!」
「はッ、はッ、は、は、は、は……。さすがは御三家のお坊っちゃんだ」
身を切るほど冷めたい天風のうちに、日本左衛門はこう嘲笑して、
「――世間知らずにも程があらあ! おめえの手で日本左衛門が召捕れるくらいなら、八丁堀や奉行所の人間どもは、あすから飯の食いあげになるだろう」