Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
肩に手を。
戸まどいしては、かえって、見とがめられる惧れがあるので、逢引の男女が、たたずむように見せかけて、やり過ごそうとしたのですが、とたんに、抱きよせた娘の袖裏から、月形の短刀がのびるよと見るまに、日本左衛門のあばら骨とまではゆかず、突き辷ッて手の甲をかすッたのです。
「あっ」と、一歩を引く。
「しまッた!」
日本左衛門としては、あるまじき不覚。
かれ程な者も、小娘の涙にはウカと油断をさそわれたものか、不意に手をかすッた短刀は、咄嗟たたき落としたものの、娘は声かぎり悲鳴の尾を引いて、まっていた異風行列の駕わきへ、
「お。お助け下さいまし! あれっ、あれッ」
風鳥のように転びこんで、恐怖を装った金切り声に、御守殿たちを驚かせました。
「これッ」
「お駕わきへ――」と、仲間の提灯と、紅葉を投げて騒ぎ乱れた紅白の女房たちが、青漆砂子塗の女駕と娘の間を遮って、
「寄ってはならぬ」
「無礼もの! そちは何じゃ」
と、口々です。
「は、はい……」娘は小鳩のようなおののきを見せて、顔の紫ちりめんを解く、そして、むき出された文金の高髷と白い指を、惜し気もなく地につかえて、
「今、あの木立の暗がりで、盗賊に刃物をつきつけられ、恐ろしい目にあおうとしていたものでございますから、それで思わず不作法な……ど、どうぞ、お助けなされて下さいまし