Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

そして自分は、先に小田原へ向った金右衛門や子分のあとを追うべく、砂地に捨ててあッた編笠を取り上げますと、

「待ってください親分」

何と思ッてか、お粂も急に立ち上がって、その編笠をつかみながら、

「じゃ親分、あなたとは、今夜ではっきり別れましたね」

「よし! 金吾ともきッと切れたな」

「その御親切はわかりましたが、私も丹頂のお粂、卑怯な嘘はいいますまい。ここでおことわりしておきますが……親分え、お粂は死んでも相良さんとは切れない覚悟でございますから、それだけを承知していて下さいましね」

「なんだと」

かぶりかけた編笠が、ふたたびその手に戻りかける。

虫をこらえていた心へ、女が投げつけてきた捨鉢なことばに、

「お粂ッ、もう一度いってみろ」

むッと、日本左衛門の顔いろがうごきました。

この男の憎念を買ったが最後、それがどんなに恐ろしいものかということも、知りぬいているお粂ではありましたが、持前の気性がこじれて、その恐れ気もなく反撥的に、

「はい、どんな目にあおうとも、相良さんのことは思いきれない! 金吾さんとは手を切れないといッたんですよ!」

糸切歯に唇をゆがめて、二度まで、男の名をことばのうちに呼んだものです。