Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate

Aozora Bunko

「どこだ、どこだ火事は」

土手を駆けて行く人と人が、たれに聞くでもなく、これに答えるでもなく、

「上町の芝居小屋だ――岩井染之助の楽屋から出たんだとよ!」

声を投げ合ッて走って行く。

岩井染之助一座。

なるほど、そんな幟が、宿場の辻にハタハタしていたのを見かけたことがある。

――と、四ツ目屋、雲霧、尺取などは、面白そうにそれを対岸の火災視しておりましたが、ひとり秦野屋九兵衛は、

「ウーム、この風じゃ……」

黙然と腕ぐみをして、炎をにらみながら呟やきました。

「秦野屋、どうやらあの火の手じゃ、おめえの店は一舐めになりそうだな」

と、日本左衛門が側へ寄ってささやくと、九兵衛は結んでいた口をニヤリと歪めて、

「――とすると、千両ばかり煙になる勘定だが、楽に積んだ身代は、やッぱり、楽に灰になりゃアがる」

「あはははは。諦めねえ」

と、日本左衛門も、これが堅気の秦野屋なら、慰めなければならないところを、かえって妙に可笑くなって、九兵衛の肩をたたきながら、

「――おい、盗ッ人の目ざまし草だな」

おのれの身にもありそうな、この皮肉に自嘲をおぼえて、愉快そうに哄笑しました。