Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
火をもてあそぶ風は血を見た人間のように、いよいよ猛り出してくる。
宿場の火事は加速度に燃えひろがりました。
一度西から東へ転じていた風が、また俄に方角を変えてきたので、火の手は二手にも三手にも分れた様子で、もう秦野屋の店あたりも、完全に助からない位置にあるようです。
九兵衛は遠い炎に赤く照らされている顔を笑いくずして、
「こうなってみりゃ、結句おれも気楽にお仲間入りができるというもの。どれ、焼け出されの秦野屋から、お先に御免こうむろうか」
サバサバとした顔つきで、日本左衛門や他の者と、上総での再会を誓って、ぷいとそこから影を消す。
「では親分、土用の辰に」
「いずれいい吉左右をお土産に」
「あっしもこれで」
「手前もここで」
雲霧の仁三、四ツ目屋の新助、尺取の十太郎、千束の稲吉達も、各その組の手下を六、七人ずつ連れて、ちょうど今夜の廻り風のように、そして四方に散らばる火の子のように、思い思いな方角へ、騒ぎにまぎれて立ち去りました。
その頃――
相良金吾は行杖をかかえて、まっしぐらに上流の渡船場へ向って駆けている。
たれを追いかけたわけでもない。ただ、向うへわたる渡船を求めるために。