Classici giapponesi con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Leggi 江戸三国志 (えどさんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 577.271 caratteri · 1141 schermate
――がしかし、その一室をうかがっていた者は、ひとり、窓の外の盲蜘蛛の如き人影ばかりではありません。
廊下口の杉戸の外にも、脇差をかかえた一人の武士が、じいっと、室内の衣ずれをも聞きのがすまいとして、身を硬ばらせている。
それは、酒席を抜けて来た金吾でありました。金吾なれば、彼の行為にうしろ暗いところはない。彼が、大切な若殿の身を護衛するために、かく、側ぢかく侍しての根気は、まことに当然な振舞であります。
部屋のうちでは、いよいよひそかな二人の対坐です。――暫くすると万太郎らしい声で、
「なんの願いかは知らぬが、それ程の誓いをたて、きっと違背をせぬというならば、そちの頼みを聞いてやってもよいが……」と言う。
「ははっ」と、千蛾はおののくような感激をあらわして、
「お快く御承諾、かたじけない儀に存じまする。この上は、千蛾が骨身をけずりましても、必ず、夜光の短刀をお手に入れて、若殿の思召しに酬わずにはおりませぬ」
「それはうれしいが、しかし、老人。いったいそちの願いとは何ごとじゃ」
「ふつつかな、ひとりの娘の事にござります」
「あの月江とよぶ女子か。して、それがどうしたのじゃ」