Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
彼女は千枝松が毎晩誘いに来るのを楽しんで待っていた。千枝松もきっと約束の時刻をたがえずに来て、二人は聞き覚えの普門品を誦しながら清水へかよった。
その藻をそそのかして、江口の遊女になれと勧めた陶器師の婆は、たとい善意にもしろ、悪意にもしろ、千枝松の眼から見れば確かに憎い仇であった。彼が口をきわめて罵るのも無理はなかった。戸をたたいて嚇した位では、なかなか腹が癒えなかった。彼はその晩自分の家へ逃げて帰っても、まだ苛いらしてよく眠られなかった。よもやとは思うものの、どうも安心ができないので、彼はあくる朝、叔父があきないに出るのを見送って、すぐにとなり村の藻の家へたずねて来た。
来ると、彼はまず隣りの陶器師の店をのぞいた。店の小さい窯の前には人の善さそうな陶器師の翁が萎えな烏帽子をかぶって、少し猫背に身をかがめて、小さい莚の上で何か壺のようなものを一心につくねていた。日よけに半分垂れたすだれの外には、自然に生えたらしい一本の野菊がひょろひょろと高く伸びて、白い秋の蝶が疲れたようにその周りをたよたよと飛びめぐっていた。婆は奥のうす暗いところで麻を績んでいた。