Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
そこで叔父御が言わしゃるには、おれも長年烏帽子こそ折れ、腰折れすらも得詠まれぬは何ぼう無念じゃ。こういう折りによい歌作って差し上げたら、一生安楽に過ごされようものをと、笑いながらも悔んでいられた」
「ほう、そんなことは初めて聞いた」と、藻も眉をよせた。「なるほど、独り寝の別れ、こりゃおかしい。どんな名人上手でも、世にためしのないことは詠まれまい。ほんに晦日の月というのと同じことじゃ」
「水の底で火を焚くというのと同じことじゃ」
「木にのぼって魚を捕るというのと同じことじゃ」
二人は顔をみあわせて、子供らしく一度に笑い出した。その笑い声を打ち消すように、どこやらの寺の鐘が秋の空に高くひびいてうなり出した。
「おお、もう午じゃ」
藻がまずおどろいて起った。千枝松もつづいて起った。二人は慌ててそこらの薄を折り取って、ひとたばずつ手に持って帰った。千枝松は藻と門で別れる時にまた訊いた。
「けさは隣りの婆が見えなんだか」
藻は誰も来ないと言った。それでもまだなんだか不安なので、千枝松は帰るときに陶器師の店を又のぞくと、翁はさっきと同じところに屈んで、同じような姿勢で一心に壺をつくねていた。