Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
ただいま戻りました」
年頃は三十二、三の、これも主人とおなじような鋭い眼をもった小ざかしげな侍が、縁さきに行儀よくうずくまった。
「ほう、兵衛か。近う寄れ」
頼長にあごで招かれて、藤内兵衛遠光は烏帽子のひたいをあげた。彼は信西入道を仰ぎ見て、更にうやうやしく式代した。
「どうじゃ。洛中洛外に眼に立つほどの事どももないか」と、頼長はしずかに訊いた。
遠光は頼長が腹心の侍で、宇治と京とのあいだを絶えず往来して、およそ眼に入るもの、聞こゆるもの、大小となく主人に一いち報告する一種の物聞きの役目を勤めていた。頼長は彼の報告によって、居ながらに世のありさまを詳しく知っているのであった。
「玉藻の御があすは三井寺参詣とうけたまわりました」
「玉藻が三井寺に参詣するか」
頼長と信西とは眼をみあわせた。
「山門と三井寺とは年来の確執じゃ。その三井寺に参詣して法師ばらを唆かし、世の乱れを起こそうとてか」と、頼長は何事も見透かしたようにあざ笑った。「さりながらこれは大事じゃ。山門の荒法師も手をつかねて観てもいるまい。又しても山門と三井寺の闘諍、思えば思えば浅ましさの極みじゃ」