Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
思えば不思議なことよのう。気の弱い侍女どもばかりでなく、衣笠どのの眼にまでも、ありありと見えたとあるからは、臆病者のうろたえた空目とばかりも言われまいよ」
夢のような心持で、千枝太郎はこの話を聴いていると、小源二はまた言った。
「就いては大殿のお使いで、おれはけさ早う土御門へ行って、安倍泰親殿の屋敷をたずねた」
「おお、土御門へ行かれたか。して、播磨守殿はなんと占われた」と、千枝太郎は訊いた。
「播磨守殿は慎みの折柄じゃとて、直きじきの対面はかなわなんだが、弟子の取次ぎでこれだけのことを教えてくれた。御息女には怪異がついている。三七日のあいだは外出は勿論、何者にも御対面無用とのことじゃ。右様の次第じゃで、見識らぬ者どもは当分御門内へ入るるなと大殿からも申し渡された。気の毒じゃが、そちも当分は出入りするな」
千枝太郎は失望した。さりとて何を争うことも出来ないので、すごすごと別れてここを立ち去ると、青糸毛の牛車がこの屋敷の門前をしずかに軋らせて通った。彼がそれとすれ違ったときに、物見のすだれが少し掲げられて、女の白い顔がちらりと見えた。その顔が玉藻であるらしく思われたので、千枝太郎はひと足戻って覗こうとする途端に、すだれは音もなしにおろされてしまった。