Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
その石のほとりに近寄るものは忽ちに眼が眩うて倒れる。獣もすぐに斃れる。空飛ぶ鳥ですらも、その上を通れば死んで落つる」
「それは定か。まことの事か」
「なんでいつわりを言おうぞ。わしはあの地を通り過ぎて、土地の人から詳しゅう聞いて来たのじゃ。石は殺生石と恐れられて、誰も近寄ろうとはせぬほどに、そのあたりには人の死屍や、獣の骨や鳥の翅や、それがうず高く積み重なって、まるで怖ろしい墓場の有様じゃという。お身も陸奥へ旅するならば、心して那須野ヶ原を通られい。忘れてもその殺生石のほとりへ近寄ってはならぬぞ」
「そのような怖ろしい話はわしも初めて聞いた」と、千枝太郎は深い考えに沈みながら言った。「では、その石に魂が残っているのかのう」
「おそろしい執念が宿っているのじゃ。どの人も皆そう言うている。旅に馴れたわしですらもその話を聞くと身の毛がよだって、わき眼も振らずに駈けぬけて通って来た。お身たちは年が若いで、物珍しさにその殺生石のそばへなど迂闊に近寄ろうも知れぬが、それは命が二つある人のすることじゃ。わしの意見を忘れまいぞ」
その親切な意見も耳に沁みないように、千枝太郎は大きい眼をかがやかして川むこうの空を眺めていた。