Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
前に挙げたもろもろの災いは、何かのおそろしい前兆であるらしく都の人びとをおびやかした。
そのなかでも盗賊の多いというのが覿面におそろしいので、この頃は都大路にも宵から往来が絶えてしまった。まして片隅に寄ったこの清水堂のあたりは、昼間はともあれ、秋の薄い日があわただしく暮れて、京の町々の灯がまばらに薄黄色く見おろされる頃になると、笠の影も草履の音も吹き消されたように消えてしまって、よくよくの信心者でも、ここまで夜詣りの足を遠く運んで来る者はなかった。
その寂しい夜の坂路を、二人はたよりなげにたどって来るのであった。月のひかりは高い梢にささえられて、二人の小さい姿はときどきに薄暗い蔭に隠された。両側の高藪は人をおどすように不意にざわざわと鳴って、どこかで狐の呼ぶ声もきこえた。
「のう、藻」
「おお、千枝まよ」
男と女とはたがいにその名を呼びかわした。藻は少女の名で、千枝松は少年の名であった。用があって呼んだのではない、あまりの寂しさに堪えかねて、ただ訳もなしに人を呼んだのである。二人はまた黙ってあるいた。
「観音さまの御利益があろうかのう」と、藻はおぼつかなげに溜息をついた。