Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
「無うでか、御利益がのうでか」と、千枝松はすぐに答えた。「み仏を疑うてはならぬと、叔母御が明け暮れに言うておらるる。わしも観音さまを信仰すればこそ、こうしてお前と毎夜連れ立って来るのじゃ」
「それでも父さまはこの春、この清水詣でに来たときに、三年坂で苔にすべって転んだのがもとで、それからどっと床に就くようにならしゃれた。三年坂でころんだものは、三年生きぬと聞いている」と、藻の声はうるんでいた。
邪魔な梢の多いところを出離れたので、月はまた明かるい光りを二人の上に投げた。玉のような藻の頬には糸を引いた涙が白くひかっていた。千枝松は又すぐに打ち消した。
「三年坂というのは嘘じゃ。ありゃ産寧坂というのじゃ。ころんだとて、つまずいたとて、はは、何があろうかい」
むぞうさに言い破られて、藻はまた口を結んでしまった。二人は山科の方をさして夜の野路を急いで行った。いったんは男らしく強そうに言ったものの、少年の胸の奥にも三年坂の不安が微かに宿っていた。
「お前の父御の病気も長いことじゃ。きょうでもう幾日になるかのう」と、彼は歩きながら訊いた。
「もうやがて半年じゃ。どうなることやら、心細いでのう」