후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
このときほど、ぼくは自分の悪さを身に沁みて感じたことはない。恐いような気もちにさえ襲われた。貞は、ちぢれ髪で額のまん中に、地蔵黒子があった。それから幾年か後には、ぼくは貞が云った通りになった。行商箱を背負って、よその門口から門口を断られて歩いたり、ひとの切れ草履を拾って足にはきながら食を探す路傍の小犬になっていた。――何かつらい思いにくるまれて、ぽろぽろと、ひとりでに顔が下へ向いてしまう時など、貞の顔が、往来の地面に見えてきた。そして、貞はもうお嫁に行っただろうかなどと思ったりして、もしどこかで、貞に会ったら、どうしようと、本気になって歩くにも心を労ったり、心のなかで、謝ったりしたものだった。
前に、外では喧嘩をしたことがないと書いたが、外でも一度、やったことがある。
名は記憶にないが、相手はぼくらより一学級上で、英町の焼芋屋の息子だった。二度も落第していたので、小ツブなぼくなどよりはるかに大きかった。これがぼくら群雀の同級生には、鷲みたいな脅威であった。たびたび皆で歯ぎしりしていたが、どうにも強くて彼の影を見ると逃げ廻るだけだった。ところがある日、どういういきさつがあったのか、ぼくが帰る途中、彼の方から前に立って、ぼくの行く途に立塞がった。