후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
十九の朝
だからぼくは今度こそ父に申し出て、ドック勤めはやめたいと、ひそかに折を窺っていた。そして東京へ出て、苦学したいのが、真意であった。
ところが、その希望をつよく両親へ云い出しえないでいる前に、ぼくは船腹のペン塗り仕事の最中、仲間の者の過失からドックの底へ、足場もろとも落されて、野毛山の十全病院へかつぎこまれる身となっていた。
十九の朝
その日ぼくは、ドックの底から担架でかつぎ上げられて、野毛山の十全病院へと運ばれてゆく間に、いつか意識を失っていた。何分か何十分かは、完全な仮死に落ち入っていたわけである。
病室の白いベッドに気づいてからも、どんな手当をうけたのか、ぼくを繞っている人々が、いかなる会話を交わしていたのやら、当座も今も、全く何の記憶がない。ただ全身のいたみを歯の根と指に握りしめて、どこにも温みのない硬ばッた四肢を慄わせて居ただけだった。
頭のしんには、いつまでも、ドックへ墜落したせつなの、グヮンという衝撃が、そのまま詰まっている感じで、幾日も止まった時計のように頭脳の働きをしなかった。だから得難い経験を通っていたのに、仮死から蘇生の前後は、やはり夢中であった。