일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면

아오조라 문고

長い夜途や、遠いお使いの途々には、いつも空想を道づれにして歩いた。

江戸文学の耽読や、家庭の眼を偸んでは足しげくのぞいた伊勢佐木町の芝居小屋が、ぼくのそれをいやがうえに助成していたことはほぼ疑いない。その頃、伊勢佐木町の小屋は、羽衣座、賑座、喜楽座、雲井座などであった。壮士芝居というものも盛んであった。けれどぼくはやはり歌舞伎が好きであった。羽衣座と賑座とが、常時どっちも旧派の俳優の庵看板をかかげていた。羽衣座の舞台に年中出ていた中村玉之丞という俳優、おなじ一座の団童などという俳優が好きで、この一座の演し物は殆ど観つくしていたといえるかも知れない。

幸い、その頃、母方の佐倉のお祖父さんが十日半月おきに来てはのべつ滞在していたので、ぼくはおじいさんにかこつけては、日曜日など、お重箱をさげてはよく観劇に出かけたのである。ところが、おじいさんは羽衣座より賑座の方が好きで、そのためぼくもいつか賑座贔屓になってしまった。

賑座という小屋は、その頃、ハンケチ芝居とよばれていた。横浜だけの流行語だが、ハンケチ女という称もよく使われていた。生糸や羽二重の輸出につれて、その頃、居留地の商館から外地向けの絹ハンケチが夥しく売れていたのである。