후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
と、云い放して、梯子段を這うように、二階へ上がってしまった。
それから、たった三日目か四日目に、ぼくはよそへ奉公に出ることになった。奉公先はオテイちゃんのお母さんの近藤夫人が紹介してくれた家で、近藤さんの親戚にあたる住吉町の川村印房という印章店であった。「御主人は、とても優しい人だし、おかみさんは私の従姉妹にあたる人だから、ちっとも、つらい事なんかありやしないからね」と、その日、ぼくを連れに来た近藤夫人は、なぐさめてくれたが、親しい家というだけになお、ぼくはよけい嫌でならなかった。もっと誰も知らない家へ行って、誰の眼にもふれない所で働くなら働きたかった。
いやそれよりも、もっと嫌だったのは、丁稚さんの着る縞の着物に角帯を締めさせられた事だった。幼少から着なれていた紺ガスリとの訣別ほど悲しかった覚えはない。近藤のおばさんと母のあいだに挟まって、嫌々紺ガスリを脱がせられたのを、近藤夫人がけらけら笑って「よく似合うわよ、英さん」なんて言ったとき、ぼくは、ぼくの父がやるような癇癪を何かに爆発させたくなった。そして、角帯を締めて貰うやいなや、便所の隅へいって、おいおいと声をあげて泣いた。