후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
宛てによこした義兄は、「少々志す事がありますので、不孝の罪重々ながら、日本を去り、外国へ行きます。おそらく終生再びお目にかかる事もないと存じます故、小生の一身は、世にないものとおあきらめ下さるように」というような意味を告げた儘、それきり横浜へも帰らず、また勤め先の左右田銀行にも出勤せず、どこかへ姿をかくしてしまったのであった。
一時、この義兄の失踪騒ぎでは、父はいうまでもなく、母も知人も、警察から私立探偵まで頼んで百方行方を探し廻ったのであった。けれども郷里の小田原には全然消息を絶ち、東京へ出た形跡もなく、ついに杳として三十幾年か、分らず仕舞いになってしまったのであった。――それが、ずっと後年、ぼくの文筆名を誌上などで見て知ったものだろうか、或る日突然、当時芝公園にいたぼくの家をふらりと訪ねて来たことがあった。――後日、そういう話もあるのであるが、もうその時は、とうの昔に父も死に、母も死んだ後だった。殊に、その辺の事は、まだここで語る順序ではないし、かんたんにも語りきれない。――で今はぼくの唯一人の義兄も、父の入獄以前に失踪して行方不明になったという事だけを、ここでは云っておくにとどめる。