일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면

아오조라 문고

と、つまりはこっちの根負けである。

いったい何を読ませられるのか、読者は見当がつかないであろう。筆者のぼくにも何から書いていいのかはっきり掴めていないのだから。――ただ父の郷地は小田原なので、最近手にした同地の中野敬次郎氏からの書翰を、これ幸いと書出しの手懸りにさせてもらった次第だった。

前述、中野氏の手紙にも見えるように、ぼくは小田原市から招かれた事がある。公民館はいっぱいの入りで、ふつうの講演会とちがい何かとても面映ゆかった。開会のへき頭に益田市長は「吉川さんはどうも怪しからん、小田原は父祖の出身地であるのに、当地にはめったにお顔も見せず文章にも見えないから、市民はそんな関係をいっこう知っていない。そこで私が強引に引っぱり出して、今夕、皆様に御紹介申しあげた次第であります」といったような挨拶をされたと覚えている。

ところが、拍手のあらしの中からぼくの方を見ておかしがっている顔が幾つもあった。ぼくは小田原に素気ないどころか、その頃、自分でカン詰執筆に出かければ、たいがい塔ノ沢か小田原界隈であった。福住の主人だの春日の女将だの、あちこちの人とは、のべつお目にかかっていて、益田市長には御不沙汰していたものの、そう小田原を忘れていたわけではない。