일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면

아오조라 문고

くたくたに疲れはて、一、二冊の書物を寝床にもちこんで読むのが唯一の愉しみだったが、それもランプの石油が憐れな啼き声を告げて消えてしまうとそれきりだった。ぼくの十五歳の冬の記憶は、飢えと、はにかみしか残っていない。正月の記憶もなく、とかくして半年ほどは夢中で過ぎていたのだろう。

唯ここで忽然と思い出してみる必要にせまられた事は、日露戦争の記憶である。ぼくの十五の年は、明治三十九年だから、その前年九月には、休戦調印が結ばれ、十月には日露講和条約となっていたわけである。そして、同月には、横浜港外で凱旋観艦式が行われたとあるから、全市は国旗や凱旋門に飾られ、夜空は提灯行列で真っ赤に染まり、市民の熱狂ぶりは大変な騒ぎだったものだろうと思われる。

ところが、世間のそんな歓呼と戦捷風景も、ぼくにはとんと確とした記憶にない。あの長蛇の提灯行列が流れてゆく熱烈な群衆の顔や打振る紙旗の波などは、幻影のように思い浮かぶが、その中に立ち交じったり、それを見物に行ったりした特殊な実感はないのである。

それ以前の奉天会戦とか、旅順陥落とかもぼくは川村印章店に奉公中の身であった。