후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
さっきから、ぼくの足場と、ぼくの仕事の進捗を、陸から見ていた倉庫係の平井という老人が、ぼくのペン刷毛が、さいごの僅少な面を塗り終るか終らぬうちに、
「下げるぞう。つかまってろ」
と、うしろで呶鳴るのが聞えた。
ぼくは慌てて、足場板の中ほどから、端へ駈け寄った。風にさえ、すぐブランブラン揺れる足場だし、歩くと、上下にも撓うので、自然、その上での動作は曲芸師の身ごなしが身につく程なものだった。――平井老人は、ぼくが端へ寄ってロップに掴まったと見たか、陸の上で、もう足場綱の端を、徐々にゆるめ出していた。いや、その一瞬に、足場板もろとも、まッ逆さまにぼくはドックの底へ墜されていたのである。高さは約四十呎ぐらいだったかと思われる。もし、体を振り落されていたら、宙をもんどり打って、当然、頭蓋骨を粉な粉なにしたであろうが、幸いに、ぼくは足場板の端と一しょにどんと腰を打ッて、一度、弾み上がり、そして転がるさいに、肩や脚そのほかを傷めるだけですんだのだった。といっても、とたんに、気を失ってしまったのはいうまでもない。
たちまち駈け寄って来た人たちの声が耳元ではあるが遠くに聞えた。