후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
何もしないで、温かな食事を看護婦の手で給仕され、本も読めるし、自由な空想も描いていられる。嘘みたいな、昨日と今日の違いだ。災難だった、気の毒だったと、人の云ってくれるものが、自分にとっては、逆にこんなにも密かな愉しみだったのである。
そこへ運び込まれた日、誰より先に、色を失って、駈けつけていたのは、母だったにちがいない、その母の姿さえ、二、三日は、はっきり意識にうけとれもしなかった。痛い痛いとばかり訴えていたらしい。だが、漸く容体の快方が見えてから、母は或る折、今度の事では、あのかたくなな父さえ、どんなに吃驚したかという事を、ぼくの枕元へ身をすり寄せて話した。
「――あの日、会社のお使いが来て、おまえが、ドックへ墜ちましたっていう、知らせじゃないの、お母さんも、台所にいて、そのまま腰が抜けそうになったけれど……お父さんも、あの日ばかりは、何ともいえない顔をして、腹のそこから云ってたことよ」
「お父さん、なんて云ってた?」
「ああ、男の子ひとり、なくしてしまったか……って」
「ぼくが即死したと思ったんだね」
「そうよ、それやあ、お母さんだって、どきッとしたわ。