후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
論文のばあいは、剣花坊の号を用いず、必ず秋剣であった。お会いしたのは、上京後だが、その前に、ぼくが何かへ投じた漢詩のことで、返書をいただいたことがある。新体詩が興り、漢詩などはもう顧みる者も無かったせいか、その事は、氏も覚えておられた。
とつぜん、三筋町の長屋へ訪ねて来られたのには、びっくりした。が、そういう見得のない人なのである。長州人の豪朗性そのもので、いつも書生袴、そして手提ゲ袋の紐を、片手の手頸に巻き、体じゅうで笑い、体じゅうで談じる。そして終日でも倦まない。後には、妙にぼくの親父と気が合ったものだった。どこか一脈通じるものがあったらしい。
お住居は芝愛宕町で、やがて高輪の東禅寺裏へ移った。「遊びに来給え」といわれ、そのどっちへも伺った。よく電車通りの洋食屋露月亭に伴われた。当時における硬派のジャナリストでもある。じつに話はおもしろい。殊に史学家であり、文壇事情だけでなく、政界にも通じていた。ひとり長州だけでなく、薩州とか、熊本とか、なお日本の社会にはどの部門にも閥色の余影があった。剣花坊氏はそれらの閥臭にたいしては常に反逆的口吻を弄していた。