후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
だから全部あわせると、母は十人も産んだわけである。そのくせ、当時の母はまだ三十九でしかなかった。色が白いので貧しい近所界隈の中では、よけいきれいな母に見えた。
だがその母も、長年欠かさない習慣だった起き抜けの薄化粧もいつかしなくなっていた。当歳の乳呑み児を背に、朝は三人の子を小学校へ出すまで坐るひまもなく、その後は洗濯物や他家の仕立て物の内職を、乳を呑ませ呑ませ、夜遅くまで精出していた。その一つランプの下で、ぼくは暢気に江戸文学や翻訳小説に読み耽っていた。深夜の灯一ツに、そうしてぼくが側に居るという事は、母にも何かの慰めではあったのだろう。よく父からは「英。まだ寝ないのか」と叱られたものだが、その惧れもなかったし「何を、くだらぬ物を読んでるか。その本をちょっと見せろ」と、干渉される心配も母にはなく、母には辛い内職の針仕事であったろうが、ぼくには自由なしんみりと愉しい毎晩の灯火であった。
さかんに投書もしはじめた。投書は十二歳頃、時事新報社創刊の「少年」に短文が当選して銀メダルを貰ったのがやみつきで、金港堂の「少年界」「少女界」「ハガキ文学」「女子文芸」