후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
カエの方は、まるで性質も反対だった。来ると母に「お母さん、納豆売りしてもいいから家に居たい」と、いつも云った。父は、きのの方が好きであった。
ぼくは今度こそ、家を出たいと思っていた。
諸所の口入れ所を歩き廻った末、日の出町の周旋屋で、よい口があると云われた。先はおなじ日の出町一丁目の続木商店であった。もう大晦日も近い日であった。ぼくは周旋屋を通して、いくらかの給金の前借を頼んだ。目見得をすると、それも先方できき入れてくれた。ぼくは、前借で得たなにがしの金と、周旋屋の婆さんがくれた菜漬をブラ下げて、大晦日の晩、家に帰った。そして続木商店へは五日から住み込みで勤める約束をしてきたことを母に告げた。そして金を見たらよろこんでくれるだろうと一途に思っていたところ「……住込みかえ?」と云って、母は世にも淋しげな顔をした。白い涙のすじを頬に見せた。母はその年暮頃には、もうぼくらにも分る大きなお腹をしていたのである。ぼくが家に居なくなるのは堪え難い心細さであったのだろう。父へたいしては、多少、復讐気味な反抗心さえ抱いていたぼくも、母の案外な反射を見て忽ち後悔していた。