후리가나로 읽는 일본 고전
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
大鹿 卓의 渡良瀬川(わたらせがわ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 280,528자 · 557화면
だが、正造はただ報告をきくのみで金の顔も見なかったし、誰がどこへ支出したのか流通の途も聞かされなかった。
そんな次第で、塩の湯にいても正造の嚢中は乏しかった。被害地の誰彼へ送る書状の切手代もなく、女中から一円借りてようやくそれを弁じたり、外出の途中で昼飯を食うに困って俥夫に立てかえてもらったりした。
三月三十一日、どんよりとした花曇りである。障子を開け放つと、手摺の外には鈍色の海があっておりおり紙片を飛ばすように鴎の舞いたつのが見えた。その鈍々しい眩しさが、かえって脳に鬱陶しかった。三十近い年増の女中が来て花の噂などするのをつれづれのまま聴いていたが、「春到れどもわれに春なし」と呟いて巻紙をとり、即興をなぐり書きした。
「ちらぬから馬鹿々々しくもしおれ花」また、「その時にちらねど花はしおれける」
女中はそれを覗きこんだが、自分が諷されたものと思ったのか、
「まア、先生もずいぶんです」
「いや、いや、わしのことだよ。少々の病気にへこたれているようでは、全くしおれ花だ」
数日の静養で病苦もいささか補うたようであった。
四月二日、誰も訪れる者がなかった。独り部屋の内に籠っていると、おのずから被害地の有様が脳裡を往来した。