후리가나로 읽는 일본 고전
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
国枝 史郎의 神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 188,242자 · 380화면
五
そこと云うのは湖岸なので、水漫々たる湖が眼路遥かに開けている。
「ハアほいのホイ……」
穏かな初秋の大気の中へ融け込んでしまいそうな声である。唄ってしまうと甚太郎は、何んの屈託もなさそうにキョロッとした眼をとほんと据えて、まじまじと湖面を眺めたが、
「考えて見りゃこの湖水、どうも少し可笑しいよ。いつも朦気が立ちこめていて向こう岸が見えないんだからな。それにどっちを眺めたって人っ子一人見えないのに、時々泣き声や喚き声がどこからともなく聞こえて来る。――変に気味の悪い湖水だよ。……ここへ来て今日で三日になる。今日もお天気昨日もお天気、上天気ばかり続くのに、湖水ばかりが晴れないとはどう考えても可笑しいよ。あんなに朦気の立つところを見るとこの辺一帯湿けているのかもしれない。……あれは何んだ? おお鷹か、いい気持ちに飛んで行きおる」
五
蒼々と晴れた空高く、一羽の鷹が翼を揮い、湖水を越えて翔けて行く。行手に当って山がある。王岳は千六百尺、麓に精進湖を湛え、東北の空に聳えている。その西には釈迦岳が八坂峠を抱擁しながら峨ヶ岳の峰に続いている。駿州境には雨ヶ岳同じく竜ヶ岳が聳えていたが、大室山、長尾山、天神峠の山々を隔てて富士の霊峰の峙っているのはまことに雄大な景色である。